東京高等裁判所 昭和50年(う)301号 判決
被告人 寺田順一
〔抄 録〕
所論は法令適用の誤りを主張し、原判決は被告人を労働安全衛生法二〇条三号、労働安全衛生規則三四五条一項二号、三五〇条一項にいわゆる事業者にあたるものとして、同法一一九条一号を適用処断しているが、被告人は電気等に関する高度の知識経験もなく、単に日本電設工業株式会社(以下日本電設という)が日本国有鉄道(以下国鉄という)から請負い施工していた電気工事事業に包含される屋外シリコン除去および塗布工事の作業に従事していたものであるにすぎないから、右の事業者は日本電設とみるべきであって、被告人はこれにあたらない、というのである。
しかし、右の事業者を所論のように該工事について高度の知識経験を有する者に限定的に解すべき根拠はなく(同法二条三号、労働基準法八条、九条参照)、また、原判決挙示の証拠によると、被告人は日本電設の無給嘱託の地位にあり、本件工事に関し同会社の作業責任者となっていたものであるとはいえ、同時に被告人の個人営業である寺田塗装巧芸社の経営者として、本件工事を同会社から請負代金一七〇万円で下請し、自己が雇傭した従業員を使用指揮してこれを施工していたものであるから、右工事の元請人たる日本電設と上下の関係こそあれ、これと並んで自らも下請人たる事業者にあたることは明らかであるから、原判決には法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。
(矢部 石橋 佐々木)